この作品の監督ヴァンサン・ディエッチ(Vincent Dietschy)氏に、インタビューを行ってきました!
とても柔らかい雰囲気でチャーミングな監督。一つ一つ丁寧に答えてくれるこの真摯な印象は、この映画を見ている時の印象と通じる部分も。
35歳の女性をテーマにした理由を聞いていると、年齢関わらず女性ならばドキっと刺激を受けるような・・・そんなインタビューとなりました。
□AntenneFrance(以下AF):今回の撮影は日常を切り取るような自然な映像でしたね。撮影中に苦労したところは?
□Vincent Dietschy監督(以下監督):撮影は30日間という短期間で行いました。なので、あまり解決に悩む、苦労するというよりはテンポよく前に進んでいく感じです。日中の光をうまく取り入れるために、あっちでもないこっちでもないと走ることはありましたけど。
個人的には自分の誕生日に撮影する日があって、それは複雑な心境での撮影となりました。映画の主人公も35歳という年齢を重ねていくことへの焦りがひとつのテーマになっていますが、私自身年をとるのが受け入れがたいこともあって、複雑な気持ちでしたね。
□AF:映画の主人公ディディーヌは35歳ですね。男女問わず、ひとつの区切りの年齢のように思えますが、この年の意味するものは?
□監督:現代女性は人生の中で常に時計が回っているような感覚があると思います。35歳は、今を逃したら先がない、という切羽詰った感じがあって、この年だからこそ、という重みをストーリーに加えている。35歳で「つかむものはつかまないと」という重みです。
実際、ディディーヌ役のジェラルディーヌさんからは撮影中に「こういうシチュエーションなら、もっとイニシアティブをとれるのに」という意見もありました。ですが、この年は糸の上のバランスをとるよう慎重さがあります。
20歳、25歳で人生を決める人もいるけれど、そうでなかったディディーヌが、今、どうやってイニシアティブをとるのかがテーマになっているのです。
□AF:ディディーヌのデザイン料が随分安く見積もられているというエピソードもありましたね。
□監督:はい、あれは、一般的にアーティストというのは自分自身を評価して、いくらで交渉するというのが難しく、遠慮しているうちに周りからは尊敬されなくなってしまうことを表しています。ディディーヌ自身、数年前ならそんなこともなかったのに、35歳だから、この年だからというエピソードです。
□AF:作品とは少し離れますが、フランスでは映画などの芸術を支援する活動が活発ですが、政権が変わることによって、その支援に影響が出るとも聞きます。監督も助成金が受け取れなくなる、などの影響を受けたことはありますか?
□監督:私は映画作りにおいては、助成金に頼ることなく進めていこうと思っています。助成金を受け取ると制約も出ますからね。もちろん、資金にゆとりが出ますが・・・。助成金は映画のジャンルとしてはアーティスティックなものによく出ますが、私は多くの人に見てもらえる作品であり、配給できるように、というのが念頭にありますので、助成金には頼らないようにしています。
【ストーリー】
皆にディディーヌと呼ばれているアレクサンドリーヌ(ジェラルディーヌ・ペラス)は35歳。いつもおとなしく周りの空気に合わせるタイプ。
そんなディディーヌは老人介護団体の活動に加わることになり、そこで思春期の物怖じしない女の子、チャーミングな青年、意地悪そうなおばあさんと出会い触れ合い、やがて自分の存在の意味を掴み取り、本当の愛と出会うことになる。
ロードムービーのような、自分探しの旅ならぬ日常を描いた作品だ。
【プロフィール】
1964年生まれ43歳。
国立映画学校IDHEC(現FEMIS)卒業。脚本家、監督として主に活躍。「誰がバンビを殺したの?」の脚本家として協力。今回の作品は長編として2作目となる。